魅惑の果実

お互いにケータイを取り出し、連絡先を交換した。



「こういうパーティーにはいつも出席してるの?」

「オヤジが煩いんだよね。 周りからは値踏みされてる感じがして気分がいいもんじゃないから出たくないけど、しょうがないかなって最近諦めてる」

「大人だね」

「そんなことないよ。 ただのチキンかも」



そう言って笑う誠治の顔が凄く切なく見えた。


人の数だけ悩みがある。


悩んでいるのは私だけじゃない。



「今日も部活だったんじゃないの?」

「部活って言っても、もう引退してるから遊びみたいなもんだけど、みんなとサッカーができるのは後少しだから、出来れば時間を削がれたくはないんだけどね」

「三年なの?」

「あれ? 言ってなかったっけ? 三年だよ。 美月ちゃんは?」

「私も三年だよ」



誠治は年相応って感じ。


誠治の高校は頭がいいだけじゃなくて、運動部にも力を入れている。


勉強とスポーツの両立だけでも大変そうなのに、親の仕事にまで付き合わなきゃいけないなんてちょっと可哀想。