魅惑の果実

父親からの視線が痛い。


最悪。



「誠治君と知り合いなのか?」

「あー……えっと……まぁ……」

「あの、美月さんと二人でお話してきてもいいですか?」

「あぁ、勿論だよ」

「美月ちゃん、行こう」



ホッ……。


誠治のおかげで父親の視線から免れられた。


って、元はと言えば誠治が話しかけてきたからじゃん!


たかだか一回会っただけなんだから、知らんぷりしてくれればよかったのに。



「はい、どうぞ」

「あ、ありがとう」



誠治からお茶の入ったグラスを受け取り、壁に寄っ掛かった。



「パーティーに出るなんて珍しいね」

「たまたまだよ」

「もしかしてさ、お父さんとあんま仲良くない?」

「え? 何で? 普通だと思うけど……」



仲良くないどころじゃない。


軽蔑しまくり。



「なんとなくそんな感じがした」



この人アホなフリして意外と鋭い。


勘が良いのか、よくみてるのか……とにかく気をつけよう。



「俺と友達になってよ」

「え?」

「そんくらい、いいっしょ?」



悪い人ではなさそうだし、断る理由もないし、まぁいっか。