魅惑の果実

「別に何でもないわ」

「…………」



じゃあこんなとこで泣かないでよね!!


もう、最悪。



「ねぇ……」



出て行こうとしたら声をかけられ、動きを止めた。



「はい?」

「桐生さんといつもどんな話をしてたの?」

「…………」



それ、どういう意味?


深い意味はなくただ聞いてるだけ?


それとも何か勘繰ってる?



「言えないの? 言えない様な話をしてるの?」



私を軽く睨み付ける咲さんの顔はまさに女。


私を脅かしてる。


桐生さんの周りをウロチョロしようものなら、咬み殺すって言われてるみたい。



「天気の話とか、仕事の話とか……」

「仕事って?」

「お休みなく仕事されてる様なので大変ですね、とか……当たり障りの無い話です」



以前睨み続ける咲さん。


嘘だって暴露た?


多分大丈夫。


嘘は下手な方じゃないし……。


って自分のことながらそれはどうなのよ、と思わず心の中で突っ込んでしまった。



「ふふっ、そうよね。 あの人が莉乃ちゃんとそんな深い話をする筈ないわよね。 急に変な事聞いてごめんね、今の忘れて」