魅惑の果実

あ、そうだ場所言わないとだよね。



「場所なんですけど……」

「言わなくていい」



蓮見さんに声をかけると、桐生さんに言葉を遮られた。


頭の中が真っ白になる。


桐生さんの方を向けない。


言わなくていいってどういうこと?


それって、もう知ってるって事?


そんなはずない。


だって高校生だってわかるものは持ち歩いてない。


桐生さんが知ってるはずない。



「美月、こっちを見ろ」

「…………」

「美月」

「っ……!」



身体ごと桐生さんの方へ向けられ、身体が強張る。


顔はあげられなかった。


今顔を見られたら、もろ動揺してるのが分かっちゃう。



「お前の事を調べた」

「え……? な、に……それ……意味わかんない」

「お前が小西に拉致られた時に調べた」



な、にそれ……じゃあ私が高校生だって知ってたの?


無理して背伸びして、少しでも大人っぽく見せようとしてた私って……っ。


ただのバカじゃん。



「あ、ははっ、そうだったの? そっか、子供のワガママに付き合わせちゃってごめんね」



赤信号で車が止まり、私は桐生さんの腕を振り払って車を飛び出した。