魅惑の果実

身を乗り出した大雅さんと距離が近づく。


後数センチというところに大雅さんの顔。


でも全くドキドキしない。


恋の力ってやっぱ凄いんだな。



「女」

「女に酔うタイプにはまぁったく見えませんけどね」

「あれ? ばれた?」



ソファーに深く座り直し、大口開けて笑う大雅さん。


女に酔うタイプじゃなくて、女を酔わせるタイプでしょ。


大雅さんと付き合ったら大変そう。


色んな意味で。


まぁ、桐生さんも一緒か。


チラッと視線を向けると、桐生さんと目があった。



「帰るぞ」

「どうしても?」

「そんなに呑んでいたいなら、こいつと呑んでろ」



冷たい。


桐生さんは本気でそう思ってるだけだと思うけど、まだ子供な私はこれって駆け引き?とか思ってしまう。



「帰りますー」



ふんっ。


帰ればいいんでしょ、お子様は!!


三人で外に出ると、まだ外は暗かった。


そりゃそうだよね。


まだ三時だし。



「じゃ、俺は先に帰るわ。 美月ちゃんまたね〜」

「はぁい」



大雅さんは笑顔で車に乗り込み行ってしまった。


運転手付きの車で移動している大雅さんも、只者じゃないんだろうなと思う。