魅惑の果実

モヤモヤを解消するつもりが、話を聞いて余計モヤモヤが増した。


お店のひとが注いでくれたシャンパンを手に取ると、桐生さんの手が重なった。



「水にしておけ」

「えぇー!? ヤダぁ〜」

「いいじゃん、呑んで楽しくなれば」

「そうだよー、いいじゃんっ」



空いている手でグラスを持ち直し、シャンパンを一気に呑んだ。


フワフワする。


この方法以外でどう気持ち良くなればいいのか、思いつかなかった。



「お! いい飲みっぷり」

「大雅さんも呑んで下さいね!!」

「はいはい、呑んでるよ」



可笑しそうに口元を緩める大雅さんの顔は、嫌いじゃない。


黙っていても女が寄ってきそうな人。


桐生さんとは違って、踏み込みやすい雰囲気を持ってるから。



「美月」

「な……んっ……」



横を向くと、頭の後ろに手を回され、口を塞がれた。


水が口の中に流れ込んできた。


水を飲み込むと、桐生さんの唇が離れていった。


驚きと恥ずかしさで呆然。


顎についた水を親指で拭われ、咄嗟に桐生さんから離れた。



「だ、大丈夫! 自分で拭ける!!」