魅惑の果実

「失礼致します。 莉乃さんです」



店長と中に入ると居たのは桐生さんだった。


電話で今日から普通にお店に出ると話はしたけど、まさか来てくれるとは思っていなかった。


桐生さんの座っている前に腰掛けた。



「ありがとう」

「何がだ?」

「様子見に来てくれたんでしょ?」

「あぁ、元気そうだな」

「うん、もう元気だよ!!」



本当はまだ動くと全身怠い。


お風呂もまだ傷にしみる。


でもこれ以上桐生さんに心配をかけさせたくなかった。



「まるで犬だな」

「え!? 何それ!? どういう意味!?」



もっと突っ込んでやりたかったけど、できなかった。


表情は然程崩さないにしても、こんなふうに楽しそうに笑う桐生さんを初めて見たから。


もっと見ていたかった。



「今日もお水割り?」

「あぁ、お前はソフトドリンクを飲め」

「え!? 何で!?」

「もう結構飲んでるだろ」



鏡に目を向けると、首元が真っ赤になっていた。


ここまで赤くなるのは珍しい。


瑠璃ちゃんがお酒あまり飲めなくて、代わりにガブガブ飲んでたからかな……。