いつもよりだいぶ早く教室に戻るとカチューシャで前髪を上げた了平が弁当を食らっていた。

「どーしたんだよ翔太、顔が真っ青だぞ」
「ちょっと学食の食べ合わせが悪かったみたい」

下手な返しをしたら学食で食中毒が発生したと騒ぎになるので当たり障りのない返事をしておいた。

もし騒動になったとして、ごめんなさい実は便所飯ですということになったら、俺はこの先の高校生活を陰で送らなければいけないことになる。

「マジかよ。今日の放課後俺と駿介とお前とでゲーセン行く予定立ててんだけど、どうだ?」
「……俺は今日はいいわ。家で寝てる」
「ほんとに大丈夫かよ……」

心配してくれるのはありがたいが、さっき吐いてしまったせいで頭が回らない。
了平に上手な返答ができないまま、俺は机に突っ伏した。

「おいおい、翔太どうしたんだよ」

駿介が紙パックのジュースにストロー
をさしながら近寄ってくる。どうやら自販機に行っていたらしい。
鼻につく甘ったるいイチゴオレがますます俺を気持ち悪くさせた。

「翔太がツワリだってよ」
「まじか」
「違うって」

頭を上げたせいでまた気持ちが悪くなった。
了平と駿介はお互い顔を見合わせると少し笑い、おやすみと言って向こうに行った。

放っておいてほしいときに放っておいてくれるのも友達の有難さだ。


俺は残りの時間ほとんど寝続けた。
帰りの時間になってホームルームが終わった時にはもうだいぶ落ち着いていたけれど、なんとなくゲーセンに行く気になれなくて家に帰ることにした。