泣いてないよ?


でもその言葉は発せなかった。


るきの頬には一筋の湿ったあとができたから。


それを無言で拭う。


「ん?

 泣いてなんかなかっ」



これ以上ここで居られないから


五千を渡し立ち去る。



ごめんなさい…ごめんなさい。



心の中で謝りながら。