卒業式を明日に控えた今日。
今日はお母さんと翔太がお見舞いに来てくれる日だ。
早く来てくれないかな〜なんて動かない体で思っていた。
「絵梨〜、おはよ〜」
「姉ちゃん、おはよ」
お母さんと翔太が病室に入ってきた。
…………え?……桜?…
なんとお母さんと翔太の後ろからもう三年近く話していない桜が入ってきた。
…なんで桜が?
「絵梨、びっくりしたでしょ?昨日、桜ちゃんが家に来てくれてね、それで絵梨に会いたいって言ってくれたから、一緒に来たの。もうずっと話してないでしょう?私は翔太と飲み物でも買って来るから、二人でゆっくり話しなさい?」
と私と桜に言ってお母さんは翔太を連れて病室から出て行った。
「絵梨、久しぶりだね…」
「うん。桜、元気だった?」
私がそう言うと、桜は泣きながら寝たままの私を抱きしめた。
「絵梨…ごめんね…。私絵梨がこうなってるなんて全然知らなくて。昨日絵梨のお母さんから聞いて本当にびっくりしたの。絵梨のこと、三年になってから外でたまに見ることがあって元気そうだな〜って思ってた。でも最近見なくなっちゃったからどうしてるかなって思って昨日絵梨の家を訪ねたの。でもまさかこんなことになってるなんて………。…ごめんね絵梨…私たち親友だったのに、私絵梨に何もしてあげられなかった…本当…ごめんね………」
…桜は泣いていた。
私は頑張って重い口を開いた。
「桜…ありがとう…でも私、桜には本当に感謝してるんだよ…?」
「…え?」
「…小学校のときから、体が弱かった私をずっと近くで支えてくれて、学校休んだ日はプリントを届けてくれたり…。私、桜がいてどれだけ助かったか…ずっと会えたらお礼言おうと思ってたんだよ…」
「……絵梨…」
「…でも、中学に入って私がまた休むようになっちゃってからなんか元気な桜が怖くなっちゃって……見かけてもずっと無意識に避けてた……ごめんね…?桜……」
気がつけば私も泣いていた…
桜と話せたことが嬉しかったから…
「絵梨…私ね、行きたい高校見つけて親にちゃんと自分の意見言えたの。そしたらお父さんもお母さんも好きなようにしなさいって言ってくれたんだぁ」
桜は泣きながら笑顔で教えてくれた。
「…そっかぁ…よかったね…桜…」
「これも絵梨がずっと背中を押してくれてたからだよ…?本当にありがとう」
「お礼を言うのは私のほうだよ…桜…こんな私をずっと助けてくれてありがとう。側に居てくれて、ありがとう」
「うん…!絵梨、元気になったら一緒に勉強会やろうね?それと…いっぱい女子トークしよ!」
「…本当…?嬉しいな…また桜と一緒に居れるなんて…もう会えないかと思ってた…」
「当たり前だよ!親友、でしょ?いつだって会えるよ!」
「…うん…!桜大好き…!」
それから、桜といろんな話をした。
私が知らなかった学校の話。
私が通っていたカナリアの話。
高校の話。
そして、玲の話。
桜は玲の話は凄く驚いていた。
まあ、当たり前だよね?(笑)
お母さんと翔太はなるべく遅く戻ってきてくれた。
きっと気を遣ってくれたんだね。
桜との話は、尽きることはなかった。
昔に戻ったみたいで、とても幸せだった。
そして桜は帰り際、明日の私の卒業式に来たいと言ってくれた。
私の中学の卒業式は明日、桜や玲たちの卒業式は明後日だ。
私は、一日早く病院で卒業する。
桜が病院に来てくれて、元気になったらまた一緒に勉強会をやろうって言ってくれた…
お父さんが、元気になったらまた家族四人でご飯を食べようって言ってくれた…
どっちも前に夢で見たことだよね…
私は本当に幸せ者だよ…
もう思い残すことはほとんどない。
あと少しだけ思い残すことがあるとすれば…二つだけかな…

