「……呆れる?」
「自覚はあるんだ。俺は少し自己中心的なところがある。だからそれでお前を困らせて、離れていかれるぐらいなら、ちょっとは努力してみようと思ってな。」



頭に優しく置かれる手。


「でも結局それがお前を悩ませる原因になってたわけか。」


悪かったと口にして、要さんは苦笑した。


「……えっと、つまり最近要さんの様子がおかしかったのは、全部俺のため?」
「そうだ。大体、俺がお前から離れていこうとするわけない。大人げないが、俺は涼を繋ぎ止めるのに必死だからな。」


要さんからあまり聞けない言葉。
多分、俺を安心させるために言ってくれてるんだ。


「まぁ、でも……お前が今までのままで良いなら、別に無理して努力する必要はないな。」


にやっと意地の悪い笑み。

「涼、一週間休学しろ。」
「…え?」
「旅行に行くぞ。」
「……は?」
「国内がいいか?海外がいいか?」
「ちょっ……」
「ああ、パスポート持っていなかったな?」
「待っ…」
「よし、そうと決まれば早速ホテルの予約だ。」


要さんは楽しそうにベッドから抜け出す。

やっぱり……
ちょっとは大人になってもらうべきだったかな…。


「涼、ここなんてどうだ?」
「ああ!待って!要さん!俺本当に単位ヤバイんだって!」


要さんはいつだって、ずっと近くにいるんだね。


知りたいことは、もっと、もっと、

たくさんある。

でもどんなことを知っても、きっと俺は思うんだ。


愛した人が、要さんで良かったって。