俺の冷ややかな視線など気にせず、要さんはまた少し笑った。


それからちょっと考えるように口を閉ざし、真っ直ぐ俺を見た。


「少し、大人になってみようかと思ってな。」


照れ隠しなのか要さんは顔が見えないように、胸に俺を抱いた。

「………どうして?」
「一緒に居たいからだろ。」


抱き締めてくる腕の力が更に増した。


「……ごめん。全然意味分かんない。」
「まぁ、気にするな。俺の問題だ。」



あ、また………

何も言ってもらえない。

また遠ざけられる。


「やだ……」
「?」
「そんなの嫌だ。俺は要さんのことなら何でも知りたいのに。そうやって隠さないでよ。離れていかないで。」
「隠してるわけじゃないんだが…。分かった、悪かったから泣くな。」


戸惑ったように言われて初めて、要さんの胸を濡らしていることに気付いた。


「いい加減呆れられるんじゃないかと思ってな。」


言いにくそうに要さんは切り出した。