『第八章 わがまま男子の成長』



ここ最近、要さんの様子が変だ。


「涼、今日はバイトか?」
「うん。学校から真っ直ぐ行くから、今日は晩御飯お願いしていい?」
「分かった。気を付けてな。」



そう言って、要さんが学校に行く俺を見送る。


やっぱり変だ。
ここ最近、ずっとこんな調子。


らしくない。

今までなら、学校に行くなと駄々を捏ねていたのに。


まぁ、あの歳で駄々を捏ねるのもどうかと思うけど。


「……何だかなぁ。」


大学までの道をぼんやりと歩く。



「おっはよー!」


朝からテンションの高いこの挨拶は、振り返らなくても分かる。


「おはよう、高島。」


俺の数少ない友人の高島だ。


「なんだ?今日も背中が重たげだぜ?」
「うん、まぁ、ちょっとな。」
「あれだろ、また例の同居人だろ?」
「あははは、図星…」

はぁ、と肩を落とせばその肩に優しく手を置かれる。


「俺で良かったら話ぐらい聞くよ?」
「高島……お前、良い奴だなぁ。」


高島の言葉に不覚にも、感動してしまったり。


でも良い奴だからこそ、高島には全てを話すことは出来ないんだよな。