慌ただしく家のドアを開け、中へと入る。

その音に要さんが反応して自室から顔を出した。

俺の姿を見つけて、要さんは瞠目する。


「涼?どうした?大学に行ったんじゃなかったのか?」
「要さん…」
「ん?忘れ物でもし――?」


要さんが言い終える前に、俺は要さんに勢いよく抱きついた。


「涼?一体どうした?」


戸惑う要さんの声。
それでも優しく回される腕の温もり。



「要さん、」
「ん?」
「ありがとう。」


要さんは首をかしげて俺を見る。


「なんだ、急に?全く脈絡がないぞ。」
「うん、ごめん。何か言いたくなった。」
「……今朝の事と言い、やっぱり凪に何か言われたんだろう?」


俺は離れて、要さんを真っ直ぐ見つめた。



「うん。言われたよ。要さんに深入りするなって。」


少しだけ要さんの瞳が揺れた。



「……涼、俺は」
「でもね、そんなの無理だよ。」
「ぇ………」
「だって今の俺がいるのって、要さんのおかげだし。誰に何を言われても、俺は要さんと一緒に居たいんだ。」