櫻井さんは照れくさいのか、前を向いたままだった。
「………めて」
「あ?」
「プレゼントなんて初めて貰った……」
そう言った俺を、櫻井さんは凝視した。
それから何か考えるように難しい顔をしたかと思うと、身体ごと俺に向き直った。
「プレゼントってのは、気持ちだ。」
「え……」
「何をあげたか、が問題なんじゃない。どれだけの気持ちが入っているかが大切なんだ。」
真剣な眼差しをした櫻井さんは、俺の頭に手を乗せた。
「これから嫌と言うほど気持ちを渡してやる。有り難く受けとれよ。」
頭を撫でる手は優しいのに、その高飛車な言葉がおかしくて、俺は思わず笑ってしまった。
「なんだ、そういう子供らしい顔も出来るじゃないか。」
櫻井さんは安心したように笑いを、再び前を歩き出した。
俺は撫でられた頭と胸が少し温かくて、自然と後ろを追う足取りが軽くなった。


