櫻井さんが運転する車内は無言だった。
外はちらほらと雪が降っている。
街は賑やかで、光るイルミネーションを見て思い出す。
今日はクリスマスだっけ。
あまり関わりの少ない行事だから忘れていた。
車はどんどんと人通りの多い通りへと向かっていく。
櫻井さんが急に車を道に寄せた。
「車を置いてくる。ここで待ってろ。」
俺は言われた通りに車から降り、その場に立ち尽くした。
はしゃぐ子供が目の前を通る。
どうやら両親にプレゼントを買ってもらったらしい。
「やったぁ!ありがとう!パパ、ママ!!」
あんな風にはしゃいだ事あったかな……。
自分の幼い時を思い出しても、そんな記憶はない。
「遅くなったな。行くぞ。」
声の方を見れば、車内では着けていなかったマフラーを首に巻いた櫻井さんが少し息を弾ませて立っていた。
走ったのかな…?
俺が訊く前に櫻井さんは歩き始めてしまった。
「ちゃんと着いてこいよ。」
偉そうな言葉の割りに、首だけ振り返った櫻井さんが、少しだけ可笑しかった。


