「何だ?不満か?」
俺は慌てて首を振った。
「俺には勿体ない。」
「可愛げない事言わず、子供らしく喜べ。」
「でも…」
「余計なこと考えるな。後で出掛けるから準備しておけ。」
櫻井さんは俺の部屋だといった場所から、隣の部屋へと入っていった。
残された俺はとりあえずベッドに腰掛けてみた。
「ふかふかだ…」
今日からここが俺の家で俺の部屋。
……何だか違和感だ。
櫻井 要、不思議な人だ。
どうしてここまでしてくれるんだろう。
「変な人……」
会ったときから思っていたけどさ。
改めて部屋を見回す。
掃除もされている。
あの人がやったのかな?
何て考えたら、ちょっと可笑しくなった。
そうして少し笑っていたら、部屋のドアが開いた。
「おい、そろそろ出掛けるぞ。準備はいいか?」
部屋のドアから顔を覗かせた櫻井さんは、着替えていて、さっきより洒落た格好をしていた。
「その格好でいいのか?」
さっきと何も変わっていない俺に櫻井さんは言う。
そんなことを言われても……
服なんてそんなに持っていないし、そもそもどこに行くのかも分からない。
「このままで。服、あまり持っていないから。」
「ああ、普段は制服だっけか?」
「はい。」
「そうか。なら、行くぞ。」
櫻井さんが俺の手を引いて、引き摺るように家を出た。


