「別にそういうのじゃないよ…」
「そうか。じゃあやっぱり欲求不満か?昼間から大胆だな。」



要さんは口角を上げ、ミネラルウォーターを呷った。



「そんなんじゃないって!」
「はいはい。で、何悩んでんだ?」



ミネラルウォーターを冷蔵庫に戻しながら、要さんの視線は俺を真っ直ぐ見ていた。



「悩みってわけじゃないんだけど……。一つ訊いてもいい?」
「何だ?」
「その…凪さんのこと、なんだけど…」



と、凪さんの名前を口にした瞬間、目に見えて要さんの表情が険しくなる。



「……あいつに、何か言われたか?」



そう訊いてきた要さんの目に怒りの色が見えて、それがすごく怖いと思った。



「ううん。ただ、どうしてそんなに仲が悪いのかなって、気になっただけ……」


少しの躊躇いの後、要さんは口を開いた。


「……兄弟だからだろ。」



吐き捨てるように言い、要さんは自室へと入っていった。