『第七章 平凡男子の憂鬱』



「はぁ……」


洗い物をする手を止め、思わず出る溜息。



頭を掠めるのは、あの凪さんの言葉。



“要に深入りするのは止めておいた方がいい。”



どういう、意味だったんだろう…。



気にしないようにしてはいるけど……
やっぱり気になるよ。




どんなに考えても出るのは答えではなく、溜息だけ。



「――溜息が出るほど欲求不満か?」



突然の耳元からの声に、持っていたグラスを危なく落とすところだった。


振り向けば、してやったりという要さんの顔。



「本当、面白い反応してくれるよな。」



笑いながら言う要さんを睨むけど、何の効果もないようで、楽しげに笑うだけ。



「急に耳元で喋らないでよ。」
「背後に立っても気付かないから悪いんだろう。それで、何か悩み事か?」



要さんが冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながら、横目で俺を見る。



俺は、視線を手元の洗い物に戻す。