「そろそろ閉園の時間だな。」


要さんが腕時計に目をやりながら言う。



「もうそんな時間なんだ…」
「何だ、名残惜しいか?」
「ちょっとだけね。」


要さんは、ふっと笑ってまたカメラを構えた。



「まだ撮るの?もう充分撮ったじゃん。」


遊園地にいる間、何枚撮ったかなんてもう分からない。


抗議の声を挙げれば、要さんはカメラを下ろした。



「何枚あったっていいだろ。減るもんじゃないんだ。それに、櫻井 要に撮ってもらえるなんて光栄な事だと思わないか?何たって俺は、」
「……人は撮らない、だろ?それぐらい知ってるよ。」



そう、要さんが撮る写真は風景ばかり。


決して人を撮ったりしない。



「だから黙って撮られとけ。」



と要さんは言うけれど納得いかない。


「じゃあさ、一緒に撮ろうよ。俺、要さんとの写真欲しい。」


要さんはちょっとの間呆けてから、笑って了承した。



「じゃあ誰かに頼んで――」



と辺りを見回した俺を要さんが抱き寄せ、次の瞬間には、シャッター音。



「ふっ……なかなかのアホ面だな。」
「なっ…今のなし!ちゃんと誰かに撮ってもらおうよ!」
「別にこれでいいだろ。ちゃんと撮れてる。」