涙を拭ってくれる手。


前もこうして触れてくれた。



「………誰も、」
「……………」
「誰も、愛してくれないんだ。」



俺は呆然と涙を流しながら、呪いの言葉を口にした。




「だから、俺は……いらない子なんだって。誰からも愛してもらえない子は、生きる価値がないから。生きるためには、いい子にならないと。言うことは何でも聞かないと。そうしないと、俺は生きていちゃいけないんだ。」



口が勝手に動く。


これは小さい頃教え込まれたこと。



あの施設で俺が体に仕込まれたこと。



「愛されたかったけど……愛が何なのか、俺には分からなかった。」



気付けば俺は要さんの腕に縋りついていた。



「あの人が言ってた。いらない子だから、両親は俺を捨てたって。だから、だから俺は……」
「分かった。もういい。」



要さんは俺の言葉を遮って、背中に腕を回してきた。


服が濡れることも厭わずに。