『第五章 平凡男子の見る夢』



時々嫌な夢を見る。


その時は決まって、汗だくになって飛び起きる。



「―――………ハァッ………ハァッ………また、夢。」



身体が震えているのが嫌でも分かって、立てた膝を抱え顔を埋める。



ずっと、ずっと昔の夢。



それでもリアルすぎる内容に、いつまでも捕らわれる。



逃げられない、まるでそう言われているようで吐き気がする。


「―――どうした?」



隣からの声にビクッと身体が反応した。



隣には横たわって眠そうに俺を見る要さん。



あ、そっか。
俺、要さんに抱かれてそのまま……。



最悪だなぁ。
今まで夢を見るときは自分のベッドだったから…。

よりによって要さんと居るときに見るなんて。



「……おい?具合でも悪いのか?」



怪訝に思ったのか要さんは、上半身を起こす。



反射的に俺はベッドから抜け出した。



「ううん、何でもない。起こしてごめん。」



暗闇でも要さんが眉間に皺を寄せているのが分かる。