「俺が知っているのは、お前がどんな環境で育ってきたのかという事だけだ。今のお前をすべて知っているわけじゃない。」
「それでも……俺は要さんについて知らないことが多すぎる。」



俯けば頭に優しく手が置かれた。



「何が知りたい?」
「ぇ……」
「そんなに俺の何が知りたいんだ?」



笑う要さんの顔は少し嬉しそうに見えた。




要さんの何が知りたいのか。


そんなこと決まってる。



「全部。要さんの事なら全部知りたい。」
「………わがままな奴だな。」



要さんが笑いながら言う。


俺は、この顔が好き。


本当の要さんを見れている気がして。



「要さんに言われたくないよ。」



口を尖らせて言えば、要さんの両手が頬を包んだ。



そのまま額が合わさる。



「いくらだって教えてやるよ。俺はお前のもんだ。だから、お前も教えろ。お前の全てを。」



まっすぐ見つめられて、少し照れくさかったけれど…



「いくらでも。」


俺は嬉しくて、そう返した。