「とても冗談を言っているようには見えなかったけどな。」
「……でも、ちゃんと好きな人居るって断ったじゃん。」
「そういう事じゃねぇよ。」



要さんは箸を止めて、小さく息を吐き出した。



「ったく…どこか閉じ込めとけたらいいのにな。あ、それいいなぁ。」



ニヤリと要さんは笑った。



「いや、何にもよくないから。さらっと怖いこと言わないでよ。」


チッと舌打ちをして、要さんの箸が再度動く。



「そんなに怒るような事?」
「当たり前だ。お前のことを好きになるのなんか、俺だけで充分なんだよ。」



拗ねた顔をして、そんな事言うもんだから、思わず笑った。



「……何笑ってんだ。」
「ははは、ごめん。だって要さん、本当我が儘なんだから。」


俺は色んな要さんを知っている。


仕事をしている要さん。


雑誌に載ってる要さん。


けど、どこを見ても俺と居る時の要さんの表情はない。


俺と居るときだけ見せる顔。



「俺、要さんだけが好きだよ。」
「………それだけで機嫌が直ると思うなよ?たっぷり躾てやる。」



少し満足げな笑みを浮かべて、要さんは俺の手を引いたんだ。