ぼーっとしながら俺の作った朝食に手を付ける。


一日の中でこの時間が要さんの一番可愛い場面かも。


「旨い?」
「……ん」
「食後はコーヒー?」
「……ん」



食事を終えてコーヒーを飲む頃、ようやく要さんの目が覚める。

俺はせっせと洗い物。


「今日、バイトは?」
「休みだよ。夜も作るから何食べたいか連絡入れといて」
「分かった。」


俺は洗い物を済ませて、置いてあった鞄を手にする。


「じゃあ行ってく――」


言い終わる前に腕を強く引かれる。


視界に迫るのは要さんの顔で、気付けば唇が重なっていた。

それはゆっくり離れていく。


「大学なんて行かなくてもいいだろ?俺と一緒にいろ。」


難関その2。
要さんから逃れて学校に行くこと。
ちなみに幾度となく失敗している。



「ダメだよ、要さん。この前もそう言って休んだんだから。本当にそろそろ単位がヤバいんだって。」



とまくし立てるように言って、要さんの腕から逃れ、急いで家を出た。


エレベーターに乗って一息。


最後に見た要さんの顔、めっちゃ不機嫌だったなぁ。


なんて肩を落として、大学へと向かった。