要さんを説得した翌日。

早速勉強を見てもらおうと講義終わりに高島家へと向かう。


「俺、本当にバカだから……見放さないでくれな。」
「大丈夫だよ。俺だって最初から出来た訳じゃないし。」
「ありがとう。高島の優しさにはいつも救われるよ。」
「大袈裟だって。」


人懐っこく笑う高島は、その人柄もあって周りに人が集まりやすい。

人と上手く関われなかった俺は、高校時代も友人と言える者はおらず、ずっと独りだった。

大学でも同じように過ごすんだと思っていた。


諦めと言うよりは、必要性が分からなかったと言う方が正しい。

でも高島と関わって考え方が変わった。

同じ選択科目を取ったいた高島が、たまたま隣の席に座る機会があった。
話し掛けてくれたのは高島から。

何て話し掛けられたのかは忘れてしまったけれど。

それから構内で見かけると時折話し掛けてくれるようになった。
今では友人とまで呼べる関係になった。


「試験までの間、結構な頻度で家にお邪魔しちゃうけど、迷惑だったりしない?」
「大丈夫だよ!両親共働きでほとんど家に居ないから。好きなだけ使って平気!」
「そっか」
「あ、でも………」


高島は少し考える素振りを見せた。


「どうしたの?」
「ああ、いや。確か今日は兄ちゃんが帰ってくるって言ってたかもって思って。」
「高島、お兄さんいたんだ?」


てっきり一人っ子だと思ってた……。


「うん。と言っても義兄弟なんだ。親が再婚同士でね。俺が父の連れ子。歳も離れてる。」
「そう、だったんだ……」
「あ!暗くならないで!すっごく幸せな家庭なんだ!小さい時からだから、本当の兄弟みたいで。俺の……」


高島は慈しむような表情で笑った。
この笑い方、俺知ってる………。


「俺の自慢の兄ちゃんなんだ。」


”涼、愛してる“そう言って俺を見る要さんも、同じ顔して笑っていた。