彼の言葉は、この危険な山中で一夜を明かす事を意味した。

小銃もない、拳銃もない、武器らしい武器は己の肉体と89式多用途銃剣のみ。

僅か27センチの、いわばナイフ一本で、深夜の山奥で生き延びなければならない。

いや、一夜とは限らない。

もし明日も小川達が救助に来てくれなかったら、孤立無援の中でカマドウマ達から身を守りつつ、生存自活を続けなければならないのだ。

「……」

不安と精神的疲労からか。

膝を抱えて座っていた豊田が、顔を伏せてしまう。