「大丈夫か、豊田」

駆け寄る谷口。

豊田を襲ったのが、たまたま一匹だけでよかった。

群れで襲われたら、助けるのが遅くなっていたかもしれない。

「うん、有り難う…助かったわ」

話には聞いていたが、実物のカマドウマに襲われたのは初めての事。

豊田の表情は強張っている。

「あんな生き物が本当にいるなんて…」

「この山はどうやら連中の棲みかになっているらしい…危険なのは海岸線だけかと思っていたが、もう被災地全体にカマドウマは繁殖しているのかもしれない」

呟く谷口。

もしそうだとすれば、カマドウマは相当な繁殖力で仲間を増やしているのかもしれない。