驚いたように見開かれる小川の目。

厳しい表情が、僅かに、だが確かに綻ぶのを麗華は見た。

しかし。

「何を言っている」

その表情がすぐに引き締まり、小川は麗華を窘める。

「今考えるべき事は何だ?集中すべきは何だ?任務の事以外に差し挟む余地はない筈だぞ。公私を弁えろ。それに…」

愛銃に視線を落とす小川。

「俺はお前を部下としてしか見ていない。それ以上でもそれ以下でもない」

「…………!」

麗華の瞳が一気に潤む。

「申し訳…ありません…」

声を震わせ、すぐにその場を離れる麗華。

「……」

89式小銃の分解、点検、組み立てが終わり。

「…すまない」

小川は一人小さく呟く。

麗華の気持ちは嬉しい。

しかし小川は器用な男ではない。

任務の事以外に差し挟む余地はない。

それは彼自身にとっては本当の事なのだ。