「谷口君はレンジャーだから耳がいいのかしら?」

そんな冗談めいた事を言う豊田。

戦術陸上自衛隊におけるレンジャーとは、陸上自衛官の中でレンジャー課程を修了し、レンジャー徽章を有する者。

約三ヶ月間の訓練が行われ、前半の体力訓練と後半の実戦訓練に分かれる。

前半は屈み跳躍、ロープ渡り、ロープ登り、ハイポート(小銃を両手で持ち上げた状態で行う長距離走)、20キロ走(炎天下で小銃を携帯し戦闘服着用の完全装備。アスファルトの地面を戦闘靴で蹴るので、相当な苦痛を味わう事になる)の体力訓練。

後半は爆破、小銃の射撃、襲撃、斥候、徒手格闘、隠密処理(刃物等の無音武器のみを用い襲撃、暗殺)、通信術(FM無線機での戦術交話、手信号など)、野戦築城、潜伏、ヘリボーン、舟艇潜入、武装水泳、緊急脱出(水中において装具、靴等を放棄する訓練)、森林戦、夜戦、山岳戦、雪中戦、市街戦(CQB)、生存自活(『生きた蛇を調理して食べる訓練』として知られており、食べる事のできる動植物の知識や判別法、調理法などを学び、実際に蛇や鶏等を解体処理し食する)、野外衛生、対尋問行動、パルチザン(敵の勢力圏内で、金銭や食料などを活用して協力者を獲得する)といった実戦訓練。

全ての訓練が終了すると帰還行事が行われ、隊員にレンジャー徽章が授与される。

分隊長である小川も取得している資格だが、上記の通りこの資格を有しているからといって聴力が優れている訳ではない。