任務では哨戒偵察という名の戦闘をこなし、実戦さながらの訓練を毎日十数時間続け…。

どこまでが訓練で、どこまでが実戦なのか。

平時と戦時の境界が曖昧になってくる。

戦闘ストレス反応(一般に戦闘によってもたらされる心理的な反応)によって、隊員達の疲労は蓄積されつつある。

…首都がカマドウマによって陥落された現在、日本は『戦時下』にある。

相手は人間でも軍事国家でもないものの、この国は現在侵略を受けているのだ。

戦術自衛隊とカマドウマ、両交戦者間の軍事力、或いは戦略または戦術が大幅に異なる、いわば非対称戦争。

冷戦終結後、武力による民族運動、宗教対立等が頻発するようになったが、多くの場合それらの紛争は主権国家の正規軍ではない民間武装勢力によるゲリラ戦によって実行されており、近代国家が従来重化学工業力を活用して整備してきた機械化戦力では対処が非常に困難であった。

21世紀初頭、各国軍において精強に訓練された生身の歩兵からなる特殊部隊の重要性が大きく高まっているのはこの為である。