「そこでだ」

ソファに深く腰掛けていた司令が、身を乗り出す。

「君達小川分隊は、本日付をもって戦術自衛隊特殊作戦群隷下となる」

「特殊作戦群…ですか?」

その名は勿論小川も知っている。

習志野駐屯地に駐屯する、中央即応集団の隷下部隊。

戦術陸上自衛隊初、且つ唯一の特殊部隊である。

現時点における主要任務は対テロ及び対ゲリラ作戦であるとされるが、将来的にはアメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー、デルタフォース等)と同様、他国における特殊偵察や直接行動、情報戦などの多様な任務を遂行可能な世界水準の特殊部隊を目指しているといわれる。

特戦群、特戦、特作とも略され、一般隊員からはSと呼ばれる事もある。

特殊作戦隊員選抜試験の受験資格者は原則として空挺及びレンジャー資格を有する優秀な三等陸曹以上の隊員であるが、グリーンベレーに準じた厳しい選抜試験と長期の課程教育が行われる結果、最終的に特殊作戦群の戦闘要員となれるのは志願者全体の一割程度である。

また戦闘要員として入隊を認められた隊員も、自由降下か潜水、或いは山岳潜入のいずれかの特殊潜入技能を必須として修得する必要がある。

各人の特性にあわせて各種語学やCQB、狙撃、情報、心理戦等の専門技能を修得する必要がある為、その育成にはかなりの時間とコストがかかる。

だが小川分隊は、訓練と過酷な任務によって特殊作戦群に必要な技能や能力を独自に培ってきた。

階級こそ三等陸曹に達していない者もいるが、空挺及びレンジャー資格を有するという条件は満たしているし、特殊作戦群に必要な能力はこの半年で各隊員が習得してきた。