被災地から10キロほど離れた海域に、離島がある。

かつては海水を汲み上げて真水にする事で夏季の深刻な水不足を補うというある大学の研究の為、大規模な施設が作られた周囲15キロ程度の島だったが、二年前の隕石飛来の際に甚大な損害を受けて施設は壊滅。

以来研究は凍結し、施設そのものも放棄されたまま。

現在では施設は錆びつき、海鳥達が巣を形成するという繁殖地となっている。

煙突・配管・タンク群などの重厚な構造物がそのままの離島。

「『工場萌え』の人にはたまらないですね」

「…何?」

いわゆるサブカルチャーには疎い小川が、麗華の言葉に訝しげな顔を見せた。