浮かれる麗華とは違い、小川は冷静だ。

「谷口、豊田」

彼は谷口に持ってきていた89式小銃を、豊田にMP5を渡す。

「カマドウマを掃討しつつ、敵支配地域からの脱出を図る。菱型隊形!」

「了解」

谷口を先頭に両サイドに豊田と麗華、最後尾の分隊を見渡せる位置に小川が立ち、その名の通り上方から見た場合菱型となるフォーメーションをとる。

菱型隊形(ダイヤモンド)は全周警戒の隊形で、敵支配地域の移動などに用いられる。

濃いブッシュや森林、夜間など分隊長の統制が必要な現在の状況では併列縦隊も考えられるが、併列縦隊は敵の縦射には弱い。

小川は全域の警戒に対応できる菱型隊形を選択した。

この辺のフォーメーションも分隊長である小川が判断選択する。

全ての原則は分隊・隊員の生存帰還が大前提である。