「豊田さんっ!」

駆け寄って豊田にしがみ付く麗華の顔は、既に半べそだった。

麗華にとって、一つ年上の豊田は姉のような存在。

無事を喜ぶ気持ちは肉親以上なのかもしれない。

「装備品の殆どを失ってね…谷口君がいなかったら危ない所だったわ」

そう言って谷口と微笑み合う豊田。

「んん?」

麗華が顔を上げ、二人の様子を見比べる。

「遭難している間に…何か…ありました?」

「え…っ?」

麗華の言う『何か』の意味をどう解釈したのか。

谷口と豊田は赤面した。