ぼやく二人に。

「その片付けても片付けてもなくならない瓦礫の中での生活を強いられているのは被災者だ」

迷彩服3型の上着を脱ぎ、アンダーシャツ姿の小川が、銀色のマグカップでコーヒーを飲みながら言う。

分隊長として、戦術自衛隊の先輩として、小川は厳しい顔を覗かせる事が多々ある。

豊田や麗華を一人前の自衛隊員として育成する為、何より過酷な状況下での負傷や死を回避させる為、小川は彼女達を叱咤する。

「被災者達より先に俺達が泣き言を言ってはならん。災害派遣地での鉄則だ」

「はい…」

「すみません…」

シュンとなる豊田、麗華。

「お前もそう思うだろう?谷口」

小川は傍ら、パイプ椅子に座って話を聞いていた谷口に話を振った。