「葵ちゃん…あたし達の事は誰にも言わないでほしいの」
そう言った雪絵さんの顔から光が消えたのは気のせいだろうか…
「ね?あたしも2人が一緒にいたなんて言わないから。まだ他のみんなには内緒なんでしょ?」
「えぇ?」
あたしは思わず大きな声を出してしまった。
雪絵さんは、身を乗り出して楽しそうにしている。
「あ…あたし達はべべべ別に、な何もしてないですっ」
うわ…
あたしめちゃめちゃキョドってるし…
「いいなぁ、葵ちゃんは。慶介君て、ああ見えてすごく優しいでしょ」
雪絵さんはあたしから視線をそらし、窓の外を見た。
「はっきり物を言うけど、それは全部相手を思って言ってる言葉だし。
だから、誤解する人もいるのよねぇ。ほんと、損な性格よ」
そう言って、クスクス笑っている。
「……雪絵さんは一ノ瀬さんの事…」
あたしが言いかけて、雪絵さんが振り返った。
「心配しなくても大丈夫。今は彼とは何もないから」
「え…」
雪絵さんは視線だけをあたしに向けた。
まるで、あたしの反応を伺っているみたいに。
『今は』
そっか…
やっぱり雪絵さんと慶介は…
胸の奥が何かに掴まれたみたいにギュウっと締め付けられた。
「葵ちゃん」
心が鈍い音で波をうつ。
その隙間に雪絵さんの澄んだ声が染み込んできた。
あたしは、慌てて顔を上げた。
「この前、クレープ屋の前にいたわね?」
「え?」
真っ直ぐ見据える彼女の瞳。
ああ・・・・この人にもなにもかもお見通しなんだ・・・・
「変な勘違いしないでね?
仕事上、あの場所で待ち合わせをしてただけなんだから。
それに・・・あの後、吾妻さんに会う口実を慶介君に作ってもらってたの。
そうでもしないと、会えないんだな・・・あたし達」
あたしを安心させるように言った雪絵さんの表情は一気に曇っていったように感じた。



