「いくよーー!」
絵梨ちゃんはみんなに背を向けたまま、手に持っていたブーケを空に投げた。
クリスマスカラーのその小さなブーケは真冬の寒空に綺麗なアーチを描いて宙を舞った。
あたし達は、少し離れた場所からそれを眺めた。
そして、そのブーケを受け取ったのはまだ幼さが残る少女だった。
みんなから歓声を浴び、嬉しそうにはにかむ少女を見てあたしは懐かしさを覚えた。
「葵」
ぼんやり眺めていると、不意に名前を呼ばれその声のした方へ視線を送る。
その先には、穏やかに微笑んでいる慶介が見えた。
「そろそろ、帰るか」
そう言って、右手を差し出す慶介。
「うんッ」
あたしは少し小走りで彼に駆け寄った。
そして、並んで歩く。
同じ歩幅で・・・・。
あたしは、慶介を見上げた。
あたしの視線に気づいて、慶介と目が合う。
「慶介・・・大好き」
あたしの言葉に少し驚いた表情を作った慶介は、少し照れたように「しょうがないヤツ」とはにかんだ。
そして手に持っていた鞄で顔を隠しながら、そっと唇にキスをくれた。
「・・・・!」
不意打ちのキスにあたしは開いた口が塞がらない。
そんなあたしを見て、まるで子供のように慶介は顔をくしゃくしゃにして笑った。
一指し指を、唇に当てて。
―――――大好き。
ささやかだけど・・・幸せな日々。
これからもずっとこんな日が続くといい。
この聖なる日に願わずにいられない。
大好きな人がこれからも
ずっと笑顔でいてくれますように―――と。
☆HAPPY CHRISTMAS☆
Fin.