白いベールと純白のドレスに身を包んで、あたしは教会の前にいた。



隣には緊張した面持ちのお父さん。




まるであたしの分までドキドキしてくれてるみたいで、お父さんのそんな姿を見ていたら不思議と安心した。



「・・・・お父さん」



あたしはガチガチのお父さんにこっそり声をかけた。



「な、なな、ななんだ?」


「・・・・・・・」




あまりの噛みように驚いてお父さんを見上げた。



・・・・・・・



そのお父さんの横顔を見ていたら急に胸が切なくなって、あたしはもう一度その名前を呼んだ。



「お父さん」


「ん?」



いつもなら恥ずかしくて言えないけど・・・
でも、どうしても伝えたい。



「・・・今までありがとうね。
あたしお父さんとお母さんの娘で本当に幸せだったよ」



そう言ってあたしは急に照れくさくなって足元に視線を落とした。



「・・・葵
・・・嫌な事があったらすぐ帰って来なさい。
お父さんもお母さんも・・・亮だってお前が大好きなんだ」


「うん・・・・ありがとう・・・お父さん」



前を見たままぶっきらぼうに言ったお父さんの言葉は、あたしと一緒で照れ隠しなんだろうな・・・


ほんと素直じゃないところ・・・親子そっくりだね。

なんだか、可笑しくてあたしは笑ってお父さんを見上げた。




「でも安心して?・・・慶介だもん」


「わがまま言って慶介さん困らせるんじゃないぞ」



悪戯に笑ったあたしを見て、お父さんは眉を下げて笑った。



近くで見る父の顔に、いつの間にか深い皺が入っていた事に気づく。




「・・・・・・・」




ほんとうにありがとう。



あたし、今すごく幸せだよ・・・・・・







そして、ゆっくりと
飴色の重々しい扉が開かれていく―――



たくさんの祝福の拍手に包まれて、あたしは父と一緒に一歩を踏み出した。






赤絨毯の先には、白いタキシード姿の慶介が穏やかに微笑んで待ってる。