「なんだぁ、俺すぐに気づいたけどなぁ」
「ごめんなさい」
あたしはジュンヤ君とカラオケBOXを出て、近くのカフェに来ていた。
テーブルの上のカップには紅茶がおいしそうに湯気をたてている。
そして、目の前の彼は人懐っこい笑顔を振りまいている。
「で。もう一回聞いてい?電話に出ない理由」
「・・・・」
熱々のコーヒーを口に運びながら、ジュンヤ君はあたしの顔を覗き込んだ。
「・・・・電源入ってないんだ」
昨日充電が切れたまま、あたしは電源を入れていなかった。
だから瑛太から電話が来ていたことも知らない。
きっと、あたし携帯が気になってしょーがないと思う。
だからあえて入れてないんだ。
そんなあたしの様子を見ていたジュンヤ君は突然『あ』と声をあげた。
「・・・?」
「・・・そっか。・・・葵ちゃんがあの時の子か」
なにやらぶつぶつとジュンヤ君は独り言を言っている。
「・・・・あの?」
あたしの怪訝そうな顔に気が付いたジュンヤ君はにんまりと顔中で笑って見せた。
「ま。葵ちゃんが直接聞いたほうがいいと思うな」
「・・・なにをですか?」
勝手に一人で納得してしまっている彼に向かってあたしは眉を潜めた。
意味わかんないんですけど?



