通話ボタンを押す。



数回のコール音の後、すぐに聞こえたのは瑛太のハスキーな声。



『・・・・葵!?』



ひどく心配していたのが声から伝わった。



『おまえ・・・どこにいんの?全然電話繋がんないから・・・・心配したんだぞ」



安堵の溜息とともに、少し怒ったような瑛太。でも、その言葉はすごく優しかった。
あたしは、それにただ素直にうなずいた。


「うん。ごめん」

『・・・・・・・・・・あー・・・まぁいいけど』


予想外のあたしの反応に、瑛太は何かを悟ったようだった。


携帯を握りしめていた手がすごく冷たい。
まるで氷のようになった自分の手をギュッと握り締めた。

左手にはまだ指輪がついてる。

これも、返すのかな?


ポタポタと左手に雫が落ちた。










「・・・瑛太・・・あたしね・・・・・・・あたし、慶介にフラれちゃった・・・」





なんでかな?



なんでこんなに涙がでんのかな?





苦しいよ・・・



苦しくて、胸が押し潰されそう・・・・




頭痛い。


喉の奥が痛い。


瞼がジンジン熱い・・・





あたし・・・自分が思ってより・・・・


もっともっと・・・・・・・。










「う・・・っく・・・・・・・うぅ・・・」











慶介に・・・・・・恋してたんだ・・・・・・・・・





失ってみて初めて気持ちの大きさを知るなんて

なんて酷いんだろ・・・・