その瞳に吸い込まれそうになる。
「・・・・・葵」
絞り出すように言った慶介はあたしを見つめたままそっと目を細めた。
「君に会えて本当に良かった。
・・・・・・絶対に・・・幸せになって欲しい」
――――――――――え?
な・・・
「・・・なんでぇ・・・?」
我慢してたのに。
あたしがんばってたのに・・・・
「なんでそんな事言うのぉ・・・?」
“幸せになれ”
なんて、慶介の口から聞きたくなかった。
あたしは慶介と幸せになるのを夢見てた!
なのに・・・・
「なんでよぉ・・・っ・・・ふぇ・・・」
もうダメだ・・・
我慢するの無理だよ・・・
一粒また一粒と
流れ落ちる涙。
「・・・・・・」
慶介はそんなあたしをただじっと見つめていた。
一瞬なにか言いかけたような気がしたけど、慶介は何も言わなかった。
婚約が解消されても、一緒にいようとは言ってくれないんだ・・・
政略結婚とゆう肩書きがあったからあたし達は出会えた。
それがなければ、あたしみたいな子供を慶介が相手にする訳がないんだよね?
「・・・・も・・・・・いい・・・」
一人舞い上がってたあたしがバカみたいだ。
あたしはたまらずその場を逃げ出した。
部屋を飛び出したあたしの背中に両親の声が響く。
でも、もう慶介の顔を見る事は出来なかった。