今のは慶介がフォークを落とした音だった。
―――?
慶介の表情が、なんだか少しだけ困惑しているように見える。
気のせいかな?
「こちらは?」
その人が、あたしを見た。
目が合っただけで、その瞳に吸い込まれそうになる。
「ああ…」
我に返ったように、慶介が口を開いた――
ドキン……
この人に、なんて説明するんだろ……
なぜかあたしは、少しだけ慶介の言葉に期待していた。
「あっ、もしかして… 妹さん?」
――――え?
「あれ?…でも妹がいるなんて聞いた事がないな…」
あたしは愕然とした―――
他の人から見たあたし達は兄弟のように見えるんだ・・・
今日は、いつもより頑張っておしゃれをしてきたつもりだった。
目の前にいる女の人は、きっと20代なかばくらいなんだろう。
高そうなブランドのブラウスに、カラダのラインがはっきりとでるスカートをはいている。
胸も大きいし、ウエストなんかあたしより細いんじゃないかな……
あたしは、お気に入りのシフォンのワンピが子供っぽく感じて、スカートを握り締めた。
頑張って大人に近づこうと背伸びしている自分が滑稽に思えてくる。
鼻の奥がツンとして、あたしは慌てて俯いた。
「彼女は、 俺の婚約者だよ」



