あれから、どうやって帰ってきたんだろう……


あたしはベットにうつ伏せになって、慶介の事を思った。








――――――・・・・
――――・・・




『葵、キスしようか』


慶介を見ないあたしの顔は、そっと引き寄せられた。
すごく自然な動きでクイッと上を向かされる。


慶介の顔が真上にある。




綺麗な長い睫毛…
あたしより長いのかな。



その腕からは、逃げたくても逃げられない。
慶介のメガネにあたしの顔が映ってる。


だんだん近づいて、もう息がかかりそうな距離に慶介の唇がある。

その距離に合わせて
あたしの心臓も加速をはじめた。

足はガクガクと震えだして、もうそれだけで立っていられなくなりそうだった。







あたしを包む、慶介の甘い香水の香りと……
ちょっぴり、漂う煙草のほろ苦い香り……




全部、初めて知る感覚…




首と腰に回された腕に力が入り、あたしの体は今にも持ち上げられてしまいそうになった。


顔を少し斜めにして、慶介はあたしの唇にキスをする。



――触れるだけの、優しいキス



顔を離して、違う角度からもう一度キスをされる。




……メガネしてても、キスって出来るんだ…




不思議な事に、重なる唇から、あたしの体は熱をおびはじめた……



『ん………』



慶介の服の袖を掴む手に力が入る。


この人はなんてキスが上手いんだろう。


あたしは慶介のキスで頭が真っ白になってしまったんだ………






―――――――・・・・
――――・・・



あわわわわわっ




あたしはジタバタもがいて仰向けになった。




思い出しただけでも、恥ずかしいよーっ!




あたしは左手の薬指を見つめた。



「ハァ……これからどうなるんだろ…」



冷静を取り戻したくて、あたしはそっと目を閉じた。