男たちは互いに顔を見合わせ、私を睨んで来た。



「何、お前」

「調子乗んなよ、ブスが」


その『ブス』に声を掛けてきたのは誰だよ。

と、言ってやりたかったが、これ以上、面倒なことにはなりたくなかった。


私はもう一度「どいて」と言って、無理やり行こうとしたが、



「おい、待てよ」


男のうちのひとりに腕を掴まれた。

その力が驚くほど強かったから、私は苦悶の表情になった。



「ちょっと、離してよ。痛いんだけど。警察呼ぶよ」

「ごめんなさいが先だろうが、てめぇ」


何で私が謝らなきゃいけないのよ。

こんなこと、キャバで慣れているはずなのに、今日はどうしてだか、笑って切り抜けようという気にはなれなかった。



「マジで離してって言ってんじゃん!」


声を上げて、どうにかその手をふりほどいだ瞬間、


ガッ、


と、鈍い音と共に、今まで私の腕を掴んでいたはずの男が、アスファルトに転げた。



「……え?」


何が起こったのかと、顔を上げて、驚いた。

コウが、すでに残りにふたりまで、目にも止まらぬような速さで殴りつけていたから。


その形相は、ひどく恐ろしいもので。



「おい、コウ!」

「コウ! やめろ!」


追ってきた、カイくんとユキチくんが、慌ててコウを後ろからはがい締めにする。

それでもコウは、さらにそこから半身をひねり、男のうちのひとりの顎を蹴り上げた。