嘘だ。

私は信じない。



「コウ!」


だけど、呼んでも、呼んでも、コウは目を開けない。

その、血に染まった右手に握られていた、ネックレスのトップの十字架。


私は嫌だ、嫌だと、首を横に降り続けた。



「もう無駄だよ」


ぼそりとカイくんが呟く。

私はカイくんを睨みつけた。



「コウは死んだんだよ。だって俺が刺したんだもん」

「………」

「俺が、刺したから、コウは……」


歪んだ顔。

泣いているのか笑っているのかわからないカイくん。


カイくんは血だまりの中で宙を仰ぐ。


あんたの所為だと叫び散らしてやりたかった。

コウにしたように、この男にも、同じことをしてやりたかった。



でも、できなくて。



「……コウ」


私の零した涙が、コウの頬に落ちて伝った。