私は首を横に降った。

コウだけ残して逃げられるわけないじゃない。



「私たちは一緒に帰らなきゃダメなんだよ。だって今晩はパーティなんだから」


コウが私の方へと振り向いた、その瞬間。

その瞬間を見逃さなかったカイくんは、足を踏み出した。


すぐにナイフを奪い合うように揉み合いになって。


けれど、揉み合いになった時にどこかに引っ掛けてチェーンが切れたのか、コウのネックレスが千切れ飛んだ。

コウの誕生日に、私がプレゼントしたやつだ。



コウは「あっ」と声を出し、一瞬、そちらに気を取られた。



少しの後、膝から崩れ落ちたのはコウだった。

カイくんの手には、コウの血で汚れたナイフがあった。



「……コウ?」


何が起こったのかわからなかった。

その場に倒れたコウの元へと私は慌てて駆け寄った。


カイくんは茫然と立ち尽くす。



「何で?」


カイくんはかすれるような声を出した。



「何でお前今、わざと刺されたの? 俺を刺せたはずなのに、どうしてだよ!」


コウは薄目を開ける。

そしてこの状況なのにへらへらと笑いながら、



「……だってお前、……俺は、結婚するのに、……父親になるのに……」

「コウ!」

「……これから帰って……パーティ……するのに、そんなことしたら……台無しに……」

「コウ! もう喋らないで!」


カイくんはへなへなとその場に崩れた。