私は手近に散らばっていた雑誌を、端からカイくんに投げ付けた。

必死だった。


その時、私の横の人影が動いた。


コウは自分の足の近くにあった椅子を蹴り飛ばす。

私の投げる雑誌に気を取られていたらしいカイくんは、不意のそれに驚き、一瞬、私たちから目を離して。



瞬間、コウは低い位置から体をひねってカイくんの膝にまわし蹴りをする。



倒れるカイくん。

その手からこぼれたナイフは私たちの近くに転がった。


コウはそのナイフを手に取った。



「形勢逆転だなぁ、カイ」

「すごいね、コウ。手と足を撃たれてんのに、どんな身体能力なんだか」

「てめぇが喧嘩で俺に勝てると思うな。こんなもん、ハンデにもならねぇよ」

「減らず口を」


でも、コウの体から垂れ流れる血は止まってない。

それどころか、コウは明らかに先ほどよりも苦しそうな顔になっている。



「けど、残念だね。これは喧嘩じゃない。殺し合いさ」

「………」

「お前は俺を殺せるの? そのナイフで、俺を刺せる? 俺はできるけどね。お前には無理だ」


カイくんは挑発するように言う。

コウははっと笑ってよろよろと体を起こした。


足を引きずりながらカイくんに近付くコウは、両手でナイフをしっかりと握っている。



「マリア。今のうちに逃げろ」

「……え?」

「いいから逃げろっつってんだろ!」