「コウ!」


落ち付け、私。

とにかく落ち着くんだ。


時間を稼いで逃げる方法を考えなくちゃ。



「カイくんは私やコウを馬鹿だと思ってるみたいだけど、本当に馬鹿なのはカイくんの方じゃないの?」

「あ?」

「千夏さんはコウのこと恨んでないよ。それなのに、ひとりだけ復讐の鬼みたいになって。千夏さんだっていい迷惑だよ」


カイくんは眉根を寄せた。

コウは「やめろ!」と私を制すが、



「大体、コウがやったことにするって言ってるけど、警察が見破れないわけないじゃない。そんなこともわかんないで何が『計画』よ」

「ほんとにムカつく女だな」


刹那、銃のグリップで殴られた。


ガッ、とこめかみに衝撃が走って。

私は吐き気と共に膝をつく。



「マリア!」

「動くなって言ってるだろ、コウ」


カイくんは舌打ちを吐き捨てた。



「どいつもこいつもムカつくよ。お前らだけじゃない。ダボやユキチだってそうだ」

「ユキチくんはカイくんのこと信じてたのに……」

「『信じてた』だって? くだらない。幼馴染だから何? 俺の側につけばいいものを、最初に裏切ったのはユキチのくせに」

「………」

「ダボだってそうだ。腹の底では母子家庭で育った俺を見下してやがった。何が『親友』だ。コウの次はダボだ」


カイくんは復讐心をたぎらせる。

憎悪にまみれた目をしてる。