「……何、これ……」


一番初めに見たのは、男の人の足だった。

それを辿るように目を移すと、その人が――菅野さんと呼ばれていたあの人が、目を見開いたまま、血まみれで倒れていた。


まさか、死んでる?



「マリア……」


コウはその場で立ち尽くしていて。

コウの足元に広がる血の海。


さらにもうふたり、コウの近くで倒れている。


散乱した部屋。

私はえずきそうになった。



「何だ、マリアちゃんも来たんだ?」


はっとして顔を向けたら、拳銃をコウに向けて笑う、カイくんが。

それが本物であろうことは、この状況を見ればわかる。



「何しに来たの? ってのは、愚問かな。まぁ、そんなとこに突っ立ってないで、こっちに来なよ」

「マリア、来るな。今すぐ逃げろ」


私は頭が真っ白になった。


これはカイくんがやったことなの?

しかもカイくんは今、コウまで撃とうとしてる?



「……何で、こんなこと……」

「『何で』だって? ほんと馬鹿だね。馬鹿なコウにはお似合いな子だけど、少しは自分の頭で考えてみなよ」


机に腰をつけ、拳銃を持っていない左手で器用に煙草を取り出すカイくん。

カイくんは首を傾けて「動くなよ」と口角を上げる。



「カイ、やめろ。マリアには何もするな」

「はぁ?」